まほうをかけたよ<静岡環境作文コンクール:静岡県教育委員会教育長賞>
静岡大学教育学部附属浜松小学校 三年 壬生久葵
夏休みに入る少し前、わたしは目ひょうを立てました。
それは、毎日ラジオ体そうに行くというものです。
去年もおととしもラジオ体そうには行きましたが、二、三回ねぼうして行けない日がありました。
だから、三年生になった今年は、一日も休まないで行こうと思ったのです。
ラジオ体そう会場は、家から四百メートルくらいはなれた所にあります。
朝六時二十分にお友だちとまち合わせをして、会場まで行きます。
まだ太陽がのぼって何時間もたっていないのに、外に出るとモアーとした空気が体にまとわりつきます。
「おはよう。あついね。」
いつもお友だちとのあいさつの後には、「あついね。」と言っていました。
ビーチサンダルでアスファルトを歩くと、足のうらがすぐにあつくなります。
ためしに、お友だちと二人ではだしでアスファルトをふんでみたら、おどろくくらいあつくて、二人でとび上がりました。
でも、ある家の前だけ草原にいるようなさわやかな風がふいていました。
いつもわたしたちは、ふ思ぎに思いながらそこで休けいをしていました。
そうすると、
「おはよう。今日もがんばってこいよ。」
と、その家のおじさんが声をかけてくれました。
「おじさんの家の前は、すずしいね。クーラーをいれているの。」
とゆう気を出して、二人で聞いてみました。
すると、おじさんは、がはっとわらって、
「おじさんはね、ここを通る人たちが気もちよく歩けるようにまほうをかけているんだよ。」
と言って、バケツの水をひしゃくですくって道にまきました。
よく見ると、おじさんの家の前だけ道路がぬれています。
わたしたちは、おじさんにひしゃくをかりて、かわいた道路に水をまきました。
すると、さっきまでじっとりしていた空気がスーッとなりました。
「こうすると、二どくらい気おんがさがるんだぞ。すごいまほうだろ。」
と、おじさんは言いました。
おじさんは、毎朝こうして、まほうをかけているそうです。
三年くらい前までは、雨水をためてまいていたそうですが、去年から雨水がたまらないので、おふろの水をくんでまいているのだと教えてくれました。
その次の日から、わたしとお友だちはラジオ体そうに行く前に、家の前の道路にまほうをかけるようになりました。
おふろからバケツで水をはこんで、ひしゃくでまく。
それを六回くりかえします。
バケツは重くて大へんだけど、空をまう水がキラキラとほう石みたいにかがやいて、わくわくしました。
のこり水で気おんをさげる、このあつい夏を気もちよくすごすまほうを、みんなにも教えてあげたいです。